SPIDER

特集記事

プロレス格闘技雑誌の『Dropkick』でSPIDERの特集をしていただきました。
ご厚意により全文転載の許可をいただきましたので、ここに掲載いたします。

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テレビが変わる プロレスも変わる

2012年7月某日。SPIDERで「プロレス」という単語をキーワードに検索してみた。

するとちょうど人気コーナー「新・三大○○調査会」で大仁田厚の真鍋アナとの“大仁田劇場”を特集した『マツコ&有吉の怒り新党』がヒットしている。

たまたまこの週はゴルフ中継で休止していた『ワールドプロレスリング』は引っかからなかったが、その代わりに木戸修の娘、木戸愛がゴルフで活躍したというニュースの一場面がいくつも検索結果にリストアップされている。ほかにもオードリーと小島慶子が司会を務める『愛する姫のため』という番組にまさかの出演で奥さんのためにゲームに挑戦した藤波辰爾の勇姿(PRIDE風煽りVTR付き!)や日本テレビのスポーツニュースで司会のくりぃむしちゅー上田にメッセージを送ったNOAHの森嶋、アニマル浜口親子を特集したTBS『バースデイ』も観ることができるのはもちろんのこと、とある番組の町ロケコーナーで覆面専門店が紹介された場面や野田総理が武藤敬司からサイン色紙をもらったなどと伝えるニュースの場面なんかもヒットし見逃すことはない。

さらにサッカーのなでしこジャパンがカナダと対戦するにあたってその攻略法を特集する、というコーナーまでヒットしている。いったい「プロレス」となんの関係があるのだろう? と再生してみると「カナダの有名人」として「ローレンス・ポール・シュリーブ(71歳)」が紹介されている。スタジオのホンジャマカ恵らが「誰?」と呆然とする中、それがアブドーラ・ザ・ブッチャーの本名だと明かされた。

たったひとつの検索ワードでもこれだけ多種多様なものがヒットする驚異的な検索能力を持っているのがSPIDERなのだ。

しかもその検索結果がコーナー単位で表示されるのが驚異的だ。たとえば先程の例であれば仮に『怒り新党』『愛する姫のため』『バースデイ』、それから数々のニュース番組、ワイドショー番組といった感じで並列に検索結果が並んでいたのでは、それだけで見る気が失せる。いったいどこに「プロレス」が潜んでいるかわからないからだ。それを探しだすのは時間も手間もかかる。しかしSPIDERなら一発だ。「プロレス」という言葉や話題が出た、その部分をピックアップしてくれる。だから僕らは藤波辰爾の登場まで30分以上の時間を待つ必要はない。いきなりオードリーと対峙するドラゴンが見れるのだ!

SPIDERはすべての地上波の番組をほぼ1週間丸ごと(選ぶ画質により期間は異なる)自動録画することができる機械だ。

最近になって同様の「全録」レコーダーは出てきた。しかしSPIDERはただの全録レコーダーではない。

その象徴的なひとつが前述の驚異的な検索能力だ。

有吉社長は以前SPIDERを紹介するイベントで「テレビはつまらないのではない。不便なだけだ」と言った。僕はその言葉を聞いて目からうろこがポロポロポロポロと落ちて膝を打ちまくった。

僕はずっと「テレビはつまらなくはない。いまもテレビは面白い!」と主張してきた。けれど、「不便」なのは確かなのだ。

テレビを面白く見るためにはそれなりの努力が必要だ。

多くの人にとってテレビは暇つぶしの道具であり、「ながら見」が基本だ。

それを考えれば、無数にあるテレビ番組の中から自分にとって面白いと感じる番組に出会うのは奇跡に近い。奇跡はそうそう起きるものではない。だからテレビをつまらないと感じてしまう。「全録」だけではそれを解消するのは不可能だ。視聴者にとって何よりハードルが高いのは「面白い番組を探す」ことだ。すべて録画されていても結局は自分が「知っている」番組だけを見ているのでは、自分の知っているテレビの面白さ(つまらなさ)のままだ。面白い番組は以前のように努力して見つけるしかない。ネットであればどんどんとリンクをたどって自分が知らなかった面白いものにたどり着くのに、ネットよりずっと前に普及したにも関わらずテレビ(やその周辺機器は)どんなに発展してもなぜかその部分は不便なままだった。実は自分が知らないだけで面白い番組はたくさんあるのに。

しかしSPIDERなら労せずそれに出会うことができてしまう。

前述の検索機能に加え、コンシューマー版SPIDERには現在試作段階の「ソーシャル」機能がつけられてくるという。

たとえば現在試されているのは、ユーザーが「この番組が面白い」などとSPIDER経由でつぶやけば、他のユーザーがそのリンクからすぐに番組を視聴できる、というものだ。これがさらに素晴らしいのはそれが番組単位ではなくその瞬間に飛ぶことができるということだ。この瞬間がスゴいと紹介すれば、その瞬間を即座に見ることができる。いわばテレビにハイパーリンクを貼れるということだ。

よくツイッターの素晴らしさを「満月を見逃さなくなった」と表現することがある。タイムラインを追えば誰かしらが満月であることを伝えてくれる。同じようにSPIDERは面白い番組を見逃さなくなるのだ。文字通り蜘蛛の巣のように面白い番組を捕獲する。

SPIDERはテレビを「便利」にし、次々と奇跡を起こす。そんなシステムなのだ。

SPIDERというとテレビマニアのための機械だという先入観があるかもしれない。

しかし、そうではない。もちろんテレビっ子にとって至極の宝物であるのは間違いないが、むしろテレビを「ながら見」しかしないようなライトユーザー、つまり大半の日本人にこそ革命をもたらす。なぜなら、SPIDERでは「ながら見」するように簡単に検索することができ、自然とソーシャルが目に飛び込んでくる。ソーシャルや検索結果を“ザッピング”すれば「ながら見」感覚で、自分にとって面白いと思える番組や場面が次々と見ることができる。SPIDERはただの暇つぶしを極上のエンターテイメントに変えてしまうのだ。

だがソーシャルの充実のためにはその普及が不可欠である。

多くの人が参加してこそその威力が発揮される。SPIDERを使ってテレビの前で時間を超えてみんなが井戸端会議をはじめる。僕のようなもともとのテレビっ子だけでなく、みんながテレビっ子なる、そんなイメージ。

それが実現していけば、CMを含めてすべての番組が「作品」として批評の俎上に上がる。これまでは「送り放し」の放送だったから作品批評は生まれにくかった。だけど全録+ソーシャル+検索によってその土壌ができる。

その結果、広告主を巻き込んだ形でテレビに新たな評価基準が生み出されるはずだ。そしていままでできなかったことが便利にできるようになれば相乗効果でテレビのコンテンツも進化をとげるに違いない。まったく別の形になるかもしれないけど、テレビが娯楽の王様に返り咲く。そんな未来が容易に思い描ける力がSPIDERには確実にある。SPIDERはテレビの未来なのだ。

ちなみに僕がちょうどSPIDERを使い始めた頃に、僕は遅ればせながら、ももいろクローバーZに興味を持ち始めていた。

そこでさっそく「ももいろクローバー」を検索ワードに登録し、ことあるごとにそれを使って彼女たちのプチ特集を追う「暇つぶし」をしていた。当時ヒットする番組やコーナーはほんの数件だった。しかし、ももクロのブレイクと比例するようにヒット数が増えていき、今では検索結果をスクロールするのも大変なほど(これをもし普通の全録レコーダーで全部追おうとしたら時間がいくらあっても足りないだろう)。僕はそんなSPIDERを使った暇つぶしの結果、「好きになりかけ」だったももクロを「完全に好き」になってしまった。なんの苦労もなくそれができてしまう。悪魔的だ!(てれびのスキマ