SPIDER

特集記事

プロレス格闘技雑誌の『Dropkick』でSPIDERの特集をしていただきました。
ご厚意により全文転載の許可をいただきましたので、ここに掲載いたします。

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あまりにも言論が分断されたことによって、世論の全体像が非常に見えにくくなっている

博士いや、まさにそこにこの企画を持ち込んだ意図があるんだよ。ここ最近のプロレス格闘技業界には「つまらないからテレビから排除されたのか」「視聴率がないから排除されたのか」「あるいはスポンサーが付かないからなのか」という問題が語られていたでしょ。内輪では熱があり盛り上がってるんだけど、いったん外側に向いたときに壁が立ちはだかるという。でも、それはあらゆる先細り傾向のあるジャンルが抱えてる問題なのね。たとえば新しいメディアとして、いまツイッターやFacebookなどのSNSはそれなりの力は持っていて「世の中を変える」って言われてるよね。でも、そのSNSやネットの枠組みの中では反原発の支持率は大多数を占め原発推進派を圧倒しているよね。それにも関わらず、鹿児島県知事選でも山口県知事選でも反原発の候補者はあっさりと落選してしまった。

──脱原発を掲げた飯田哲也氏のツイッターフォロワー数は6万超え、一方の当選者はわずが27人だったということが話題を呼びましたね。

博士これは現実は現実、ネットはネットの世界に意見が分けられてしまっている。俺が考えているのは現実とネットの世界をリンクさせたり面白さを共有できないかってことなの。これを『Dropkick』的に言えば「ガチ相撲」はネットでは賞賛され、格闘技ファンのあいだでも高評価だったけど、視聴率という厳しい現実の壁があったじゃない。

──ここ数年のプロレス格闘技界はその繰り返しです。

博士そうやってジャンルに広がりがもてなくなると、新しい価値観を生み出せず過去の記憶や想い出話をマニアが語っていきがちになるけど、そこにはまるで開放性、公共性がない。閉じた世界になるんですよ。そこで「目を覚ましてください!」って言っても気がつけない(笑)。

佐々木先ほど博士がおっしゃってたテレビとソーシャルの連携でいうと、いまはクラスター化してるというか、小さく分断されていく状況ではあったんですよね。震災以降の原発を巡る言論文化なんかまったくそうで、原発推進と反原発は完全に分断されて最近はもうお互いに近寄りもしない。中間の人が状況を知ろうとしても横断されてよくわからないと思うんです。

──ツイッターなんかでも反原発派は延々と反原発情報をリツイートするだけだったりします。そこは「いいか、悪いか」ではなく議論の余地がないぬかるみになってますね。

佐々木結局、あまりにも言論が分断されたことによって、世論の全体像が非常に見えにくくなっている。たとえば民主党が新しい政策を発表して、それがいろいろと議論がされて抽出されたものが世論となり、政策決定や選挙に結びついて最終的に世の中に動かしていく仕組みになるんだけど、いまの状態ではネットでどんどん分断されるだけ。かといって、いまさら現存するテレビ局や新聞社や雑誌社がまとめられるかといえば、それは非常に考えにくい話なんです。

博士佐々木さんからすれば新聞やテレビは“消滅”するメディアですし。そこを補完するような新しいメディアが生まれるべきなんですよ。

佐々木そこでアメリカでは『ハフィントン・ポスト』という有名なネットメディアが、ひとつの出来事やニュースがあったら、その時点で有名ブロガーや著名人、ツイッターでの反応を横断的に見れるようにしている。日本でもいろんなメディア企業がそういった試みをしてる状況ではあるんですよ。

博士津田(大介、メディア・アクティビスト)さんもやろうとしてますよね。オレはそこをつなぐことができるのはSPIDERだと思ってるんですよ。

佐々木私もその期待感は大きくありますね。


ホイス・グレイシーが負けてもみんな柔術を取り入れるようになったから、グレイシーの勝ち

博士それくらい可能性を秘めたものなんだけど、SPIDERは佐々木さんくらいしか正確には伝えていない現状があるわけ。そこは「HDDや全録機はCMスキップの機械だ。テレビの広告モデルを脅かす。つまりSPIDERはテレビの敵だ」と大きく誤解されてる現状がある。

有吉だから、いままでのような情報流通の仕方でSPIDERを取り上げられても無駄だと思ってるんですよ。普通だったらプレスリリースを出して「何月何日にSPIDERが使える。使う容量は何テラで何日分を録画できる」なんて記事が何十何百と載ろうとですね、まったくSPIDERの魅力は伝わらないし、それでは意味がないと思ってて。

博士家電的に扱われても、それも誤解なんですよね。SPIDERって、全録型のHDDであり、つまりこの箱のことであり、機械って認識を持つと思うけど、正確に言えばサービスのことなんですよね。わかりやすくイメージしてもらうとドルビー入力のようなものなの。音響システムであるドルビー、あのドルビーマークがいまはほとんどのオーディオに標準装備しているみたいに。有吉社長が夢見る最終形は、すべてのテレビ受像機にSPIDERがサービスとして組み込まれるかたちなのね。わかるかな?

──え、えっと……ホイス・グレイシーが負けてもみんな柔術を取り入れるようになったから、グレイシーの勝ち、みたいなもんですかね……。

博士う~ん。いまのММAファイターにグレイシー柔術が標準装備されているという意味では当たっているような当たっていないような(笑)。その例えやってたら逆に佐々木さんや有吉さんに説明しないとわかんないだろ!

有吉ちゃんとわかるように説明しますよ。今回、博士から「もう何ページにもわたって紹介できる。文字量も気にしなくていいですよ!」と聞いているので。

──まあ、それでも限りはあるんですが……。

有吉「思う存分、語っていきましょう!!」と言われたんで(笑)。要するに我々が何をしようとしてるのか、SPIDERのどこに博士や佐々木さんは魅力を感じていただいてるのか、時代はどう変わっていくのか。そういったことをSPIDERを通して盛りだくさんで伝えたいな、と。

博士でも、いまこの記事を読んでる人の大半は「博士は何を大げさに騒いでるんだ!?」というのが率直な反応だと思う。もともと俺も佐々木さんの本を読んだ段階では、SPIDERが何かよくわからなかったし(笑)。

佐々木そんなことはないんじゃないですか。