SPIDER

特集記事

プロレス格闘技雑誌の『Dropkick』でSPIDERの特集をしていただきました。
ご厚意により全文転載の許可をいただきましたので、ここに掲載いたします。

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ツイッターの狭い圏域の中で「この番組が面白いですよ」って教え合うだけじゃなく、もう大きな可能性を秘めてる

佐々木インターネットの世界はそのセレンディピティをどう見出すかっていうことが長年の大きな課題だったわけで。結局、検索エンジンが登場して、その用語で検索すればその用語に関する知識が出る。それに対して新聞は北朝鮮の記事を読んだら、その横のスペースのあまりよく知らないアフリカの国の記事が読める。そういう他の情報を知る力がネットにはないとずっと批判されてきて、そこをどうカバーするかってことが凄く大きな課題だったんですよ。ネットがそのセレディピティを身につけるときにマスメディアを凌駕するであろう、と。

博士SPIDERがひとつの答ですね。

佐々木そこで、このSPIDERでテレビの再発見が行なわれる。それでも必ずしもツイッターの狭い圏域の中で「この番組が面白いですよ」って教え合うだけじゃなく、もう大きな可能性を秘めてると思って。結局、ソーシャル連携はマスメディアにならない。ソーシャルはしょせんは数百人から最高数千人、数万人程度の小さな規模の圏域での共有にしかならないからです。その先にはもっと大きな「日本人全体」というような多くの人たちで情報を共有する仕組みが必要になってくる。つまりはいまのマスメディアを再構築するような可能性です

──その役割をSPIDERが担える可能性があるんじゃないか、と。

佐々木昨年刊行した『キュレーションの時代』という本で、ソーシャルメディアによって情報が共有されていく未来という話を書きました。こういうキュレーションみたいなものとSPIDERを連携させていくっていうのは非常に大きな課題ですよ。いまはアルゴリズム、要するにコンピューターの計算によってセレンディピティを見出すよりも、人と人の繋がりで偶然新しいものを見出すソーシャルネットの世界、その方向性っていうのは凄い重要なことだと思います。

有吉そういえば、この会社を始めるとき会社名の候補に「株式会社セレンディピティ」というものもありましたね。

博士じゃあ、まさにSPIDERそのものじゃないですか!

有吉1999年の話です。でも、なんか女性のアクセサリー屋さんみたいな感じがしてやめました(笑)。

佐々木軽井沢に「洋菓子セレンディピティ」というお店がありますけど(笑)。


もっと太くなる方法、量が大きくなる方法を考えようよ

有吉で、SPIDERの話の続きなんですが、その「セレンディピティ」を作るために、博士がSPIDERで観てる番組やCMは全部我々のデータベースに入ってます。

博士水道橋博士一家の視聴履歴は丸裸になってるんだよ(笑)。でも、SPIDERの理想としては、それにとどまらないの。リモコンを一人一台なんですよね。

有吉そうですね。

──一家に一台じゃなくて一人一台。

有吉はい。いまはリモコン一つで「ユーザー1」「ユーザー2」というふうに個人別に切り替えは可能ですが、やはりテレビの趣味趣向ってかなり個人的なものですから。

博士だから水道橋博士一家の中でも「オレが観た番組」、「子供が観た番組」「奥さんが観た番組」とデータが分けられるわけ。

──というと正確な視聴率が……。

博士そうなんだよ! そこから本当の視聴率がわかってしまうし、どのCMが、何人に観られてるか、正確にわかってしまうんだよ。

──それは革命ですねぇ。ホントに“黒船”グレイシーですよ。

博士いまの視聴率調査の曖昧さったらないじゃない。東京・大阪それぞれ600世帯から抽出してるだけだから、CMを打つ企業側も、どこに向けてどんな球を投げていいかわからないわけじゃん。でもテレビを観ている人はどの世代か、男性か女性かが正確にわかれば視聴率分析も正確にできるわけだから、それはもう球を投げる側もターゲットCMが打てる。

──格闘技番組も視聴率問題がついて回りましたけど、まだやりようがあるわけですね。

博士全然できるよ。「ガチ相撲」が内輪でこれだけ盛り上がっても、結果的には視聴率が悪かったって言われたときに、その盛り上げ方をオレたちは知らなかった。でも、まだまだやり方はあるよ。だからプロレス格闘技雑誌も先細るパイを競合し奪い合うだけだとマニアックになるだけで太くはならないじゃん。より同人誌になるの。もっと太くなる方法、量が大きくなる方法を考えようよっていうことなんだよ。「世の中とプロレスする」って、その伝え方だと思うの。本来、プロレスファンは、ジャンル愛を伝えるソーシャルの技術が長けているって思ってんだよね。SPIDERがあれば、その力で広く伝播できると思うの。

佐々木そこはインターネットにビッグデータがありますからね。要するに、ウェブの世界というのはもの凄い膨大な情報があり、過去にどんなユーザー歴を閲覧し、どこをクリックし、あるいはどこで買い物をしたのかという凄い量のデータが蓄積されてる。それを解析する技術がいま急速に発達してるんですね。それを総じてビッグデータ技術というんですが、SPIDERはそれをテレビに持ち込んでいるわけですよ。